歯科開業医の先生方へ
日々の保険診療、そして歯科の個別指導への対策を成功させるには、それらが依拠する「法的な根拠」を理解しておくことが不可欠です。多くの先生方は、点数表(告示)にばかり目が行きがちですが、個別指導では、指導官は法律や省令の趣旨に基づいて点検を行います。
今回は、個別指導を正しく理解し、的確な準備を行うために知っておくべき、保険診療に関連する法律の全体像を、その階層構造とともに解説します。
📜 個別指導と保険診療の「法的な根拠」:ルールの階層構造
日本において行政機関が行う全ての活動は法律に基づいていますが、保険診療のルールは一つの法律だけで成り立っているわけではありません。複数の階層で詳細が規定されており、上から下へと具体性が増していきます。
1. 法律(最上位の決まり)
根幹をなす「健康保険法」
- 制定機関: 国会
- 内容: 公的医療保険制度の基本原則、保険給付の範囲、被保険者の権利義務などを定めます。
- 個別指導との関係:
- 保険診療の根幹をなす法律であり、個別指導の直接的な法的根拠となる「指導を受ける責務」(健康保険法第73条)がここに定められています。
- 私たちは、この法律に基づき、保険医として公的な医療制度を担う責務を負っているのです。
2. 政令(法律の規定を実施する命令)
法律を具体化する「健康保険法施行令」
- 制定機関: 内閣
- 内容: 法律の規定を実施するために、その内容をより具体的に定めます。
- 個別指導との関係: 法律の細部を具体化し、行政手続きの基礎を提供します。
3. 省令(私たち歯科医師の「バイブル」)
臨床の行動規範「療養担当規則」
- 制定機関: 各省庁の大臣(歯科医療では厚生労働省令)
- 内容:
- 私たち保険医にとって最も重要なのが、「保険医療機関及び保険医療養担当規則(通称:療担規則)」です。
- これは、保険医として守るべき診療の基本方針、療養の給付(保険診療)を行う際の適正な診療行為、カルテ記載の義務など、日々の臨床における行動規範を定めた、まさにバイブルとも言える規則です。
- 個別指導との関係:
- 個別指導では、単に点数算定のミスだけでなく、療担規則に則った適切な診療が行われているか(例:必要最低限度の治療か、丁寧な説明を行ったか、カルテに根拠が記載されているか)が厳しくチェックされます。
- 療担規則の理解なくして、個別指導の的確な準備はできません。
4. 告示(具体的な技術的事項)
日常参照する「点数表」
- 制定機関: 厚生労働大臣
- 内容: 省令よりもさらに具体的な、個別の技術的事項や基準を定めたものです。
- 個別指導との関係:
- 私たちが日常的に参照する**「歯科診療報酬点数表」は、この告示**にあたります。
- 「何の処置に何点が付くか」を定めていますが、その算定の前提には、療担規則や健康保険法の遵守があることを忘れてはなりません。
5. 通知(解釈と運用方法)
ルール運用を明確化する通達
- 制定機関: 行政機関
- 内容: 法令や告示の解釈、具体的な運用方法、留意事項などを示した通達です。「留意事項」や「記載要領」などがこれにあたり、算定ルールの細かな解釈などが記載されています。
- 個別指導との関係:
- 個別指導で最も指摘の対象となりやすいのが、この通知に定められた**「留意事項」や「記載要領」**の不備や誤解です。
- 算定要件やカルテ記載の具体的なルールを理解するために、通知は不可欠です。
💡 なぜ法律を知る必要があるのか?
私たち歯科医師が、これらの法的な根拠に無頓着であってはなりません。
個別指導では、指導医療官は行政官として、これらの法的な根拠(特に健康保険法の趣旨と療担規則)に基づいて、先生方の診療内容や請求事務を点検します。
単に点数表(告示)の知識だけでは、指導官の質問の意図を正しく理解し、的確に反論(または改善策を提示)することはできません。その前提となる法的な趣旨まで把握しておくことが、個別指導を乗り切るための冷静かつ的確な対応には不可欠なのです。
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