【はじめに】
歯科医院の経営において、診療報酬の「返戻」は避けて通れない課題の一つです。返戻が発生すると、事務手続きが増えるだけでなく、入金が遅れることでキャッシュフローにも悪影響を及ぼします。しかし、日常の診療や請求業務に追われる中で、つい見落としがちな算定ミスが返戻の原因になっていることも少なくありません。
今回は、歯科医院が「返戻ゼロ」を目指すために、特に注意すべき算定ミス5つと、その防止策について解説します。
【目次】
- 初・再診料の算定ミス
- 同一日における算定ルール違反
- 補綴物維持管理料の不適切な算定
- 点数の誤算や漏れ
- 記載不備・入力ミス
【1. 初・再診料の算定ミス】
歯科保険診療の基本である「初診料」と「再診料」は、算定ルールが厳格に定められています。例えば、初診の定義や期間、継続的な治療かどうかによって区別しなければなりません。
【よくあるミス】
- 同一患者で短期間に複数回「初診料」を算定
- 治療が継続しているのに、誤って初診料を算定
【防止策】
- 初診・再診の定義をスタッフ間で共有
- レセプト請求前のダブルチェック
【2. 同一日における算定ルール違反】
歯科診療では、同一日に複数の算定を行う際のルールが細かく定められています。特に「同一部位」に対する算定は注意が必要です。
【よくあるミス】
- 同日に複数の加算を併算定してしまう
- 同一歯に対する複数の治療算定
【防止策】
- 電子カルテやレセコンの警告機能を活用
- 同日処置は特に慎重にチェック
【3. 補綴物維持管理料の不適切な算定】
補綴物維持管理料は、正しい期間や対象患者にのみ算定が可能です。誤った算定は返戻リスクが高まります。
【よくあるミス】
- 期間が未経過なのに算定
- 対象外の患者に算定
【防止策】
- 算定可能な期間を一覧表で管理
- 定期的なスタッフ研修
【4. 点数の誤算や漏れ】
基本的な点数の誤りや算定漏れも返戻の大きな原因です。特に複雑な処置や新設された項目は注意が必要です。
【よくあるミス】
- 点数の計算ミス
- 最新の改定内容を反映できていない
【防止策】
- レセコンのマスター更新を定期的に行う
- 改定内容は院内で共有
【5. 記載不備・入力ミス】
意外と多いのが「記載不備」や「入力ミス」による返戻です。特に手書き記録やフリーテキスト入力が絡む部分は注意が必要です。
【よくあるミス】
- 処置内容の記載漏れ
- 数字の打ち間違い
【防止策】
- 定型文・テンプレートの活用
- 二重チェック体制の構築
【まとめ】
返戻は、歯科医院の経営や業務効率に直接影響する重要な課題です。しかし、多くの返戻は「正しい知識」と「日常的なチェック体制」で十分に防ぐことが可能です。
今回ご紹介した算定ミス5つを見直し、スタッフ全員で「返戻ゼロ」を目指す意識を共有することで、無駄な手間やストレスの軽減、そしてスムーズな診療報酬の受け取りにつながります。
ぜひ、医院内での情報共有や業務改善の参考にしてみてください。